2019年12月4日 第1刷発行
著者:ときど
発行所:ダイヤモンド社
【著者紹介】
東大卒のプロ格闘ゲーマー。本名:谷口一(はじめ)。1985年沖縄県那覇市生まれ。麻布中学校・高等学校卒業後、1浪を経て、東京大学教養学部理科一類入学。東京大学工学部マテリアル工学科に進学、卒業。同大学院工学系研究科マテリアル工学専攻中退。2010年、日本で2人目となる格闘ゲームのプロデビュー。出場する国際大会ではいずれも上位に入賞するなど、「ときど式」と呼ばれる合理的なプレイで活躍。
しかし2013年頃から、e-スポーツ業界の環境変化により、これまでの戦略の柱にしていた「ときど式」の戦い方が通用しなくなり、大スランプに陥る。試行錯誤の末、これまでの戦い方を捨て、ゼロからやり直すことを決断。
その後見事に復活し、2017年最大の世界大会Evolution(EVO)で優勝、2018年カプコンプロツアーで年間ポイントランキング1位、EVO準優勝。さらに2019年も安定して好成績を残している。
2019年、ロート製薬、ソニー・ミュージックエンタテイメント、大塚食品、QANBAとのスポンサー契約を発表。著書に『東大卒プロゲーマー理論は結局、情熱にかなわない』(PFP新書)がある。
(著者紹介より抜粋)
【オススメ度】 | |
読みやすい度 | ★★★★☆ |
お役立ち度 |
★★★★☆ |
人生の選択時に読み返したい度 |
★★★★★ |
今週の週末はあまり天気が良くなく、ずっと家にいました。
窓を開けて勉強したりHP更新をしながら、ふと、一度もクーラーをつけなかったことに気が付きました。
つい最近までセミの声が賑やかであんなに暑かったのに、もう秋の足音が聞こえてくる季節。
診断士の2次試験が段々と近づいて来ていることが実感されます。
思い返すと、昨年の2次試験に落ちたことが分かった次の瞬間から今年もリベンジすることを決めて、もう1年弱経とうとしているのですね。
久々に1つの課題に対して長く対策を継続してきました。
これから、1次試験ストレート合格生の中から、器用な天才型の人がメキメキ力をつけてきて、本番でのライバルになるのだろうなぁ、
などと考えつつ、自分は自分のペースでやるべき事を実施していこうと思います。
それでは、今週の1冊です。
異色モノとして、趣味の読み物に近い感じで購入した1冊でした。
しかし、物凄くお役立ちな本でした。
年齢が近い上、2013年頃にスランプを経験し、そこから自分を見つめ直して復活したあたり、非常にシンパシーを感じます。
このHP2回目となる、前編後編でのまとめになります。
本書では、従来型の努力を「努力1.0」とし、対するバージョンアップ版を「努力2.0」としています。
そして、合計6つのカテゴリに分け、それぞれのカテゴリ内でさらに具体的経験や持論展開が記載されています。
せっかくキレイに整理されているので、そのまま6つのカテゴリを使わせて頂き、それぞれのカテゴリ内で学びになった点や印象に残った記述をご紹介致します。
まずは、著者が説明している「努力2.0」について、努力1.0との比較と共に記載させて頂きます。
項目 | 努力1.0 | 努力2.0 |
①反復の法則 | 勝ちにこだわる | 負けの中に答えがある |
②環境の法則 | 一人でやる | ライバルは敵ではない |
③メンタルの法則 | 情熱だけで乗り切る | 心に負荷をかけない |
④継続の法則 | 己に打ち勝って続ける | 頑張りはいらない |
⑤Whyの法則 | レールにそって生きる | 嫌なことはやらない |
⑥地力の法則 | 人と比較する | 自分史上最強になる |
それぞれについて、さらに5~6個程度に分かれた項目で、経験談や持論を展開しています。
基本的にはe-スポーツや東大受験の経験からの学びが書かれていますが、ビジネスや資格試験にも十分に応用可能なことが多分に含まれていました。
これから1章ごとに分けて、私の経験も絡ませながら感想を書いていきます。
e-スポーツに限らず、仕事でも試験でも、勝ちにこだわることは重要です。
勝つことを重視せず、ヘラヘラ生きているよりは、ストイックに勝ちにこだわり努力をする姿のほうが理想的です。
しかし、勝ちにこだわり過ぎると、「負けに臆病」になってしまいます。
度が過ぎると、負けを恐れるあまり、「勝負をしない」という本末転倒なことが起こります。
つまり、勝てる自信がついたら勝負、勝てる見込みのある相手と勝負、勝てる環境でなら勝負……といった感じです。
しかし、これは、自信がないから、強い相手だから、環境が悪いから、勝負をしないことに繋がります。
また、常に変化している状況においては、「負け」や「失敗」は自分の味方になってくれます。
「負けに不思議の負け無し」という格言の通り、負ける原因は可視化して今後に繋げることができます。
負け筋というのは情報の宝庫です。
つまり、「負け」や「失敗」に慣れること、客観視して有益に活かすことが重要だと本書では述べられています。
私自身、日々のプレゼンや診断士2次試験の対策の中で、良い結果も悪い結果もあります。
そして、往々にして、良い結果の時は結果を喜び、悪い結果はすぐに忘れるようにしていました。
しかし、これでは何の成長もありません。
プレゼンであれば、手応えが悪かった時は「何が原因だったか」、「どうすれば、同じ失敗をしないように出来るか」を考えること、
診断士試験であれば、「どのような思考手順で回答を書いたのか」、「どこを変えれば、より良い回答を作ることができたのか」、
このような、自分に甘えず、客観視した分析が必要です。
プロゲーマーとして、しかも格闘ゲームという、相手があっての競技でスランプに陥るというこは、生活基盤やアイデンティティに直結する大問題だと思われます。
だからこそ、そこから復活した著者の言葉には説得力があるのだと思います。
「負けに慣れる」といっても、負けてもヘラヘラしているということではない。
自分の負けを冷静に受け止め、プロとしてそこから一つでも次に繋がる成果を見出す姿勢が肝要である。
著者はそのように述べているのだと思います。
自分に甘くなりがちな私にとっては厳しいことですが、重要な示唆を与えてもらえました。
〜 To Do 〜 |
負けに慣れ、失敗から謙虚に学ぶ。 |
例えば、格闘ゲームでの必勝の手順。
あるいは、ビジネスで言えば、自分なりに苦労して編み出した独特なセールストークや話法。
こういったものは、自分の努力の賜物であり、ライバルに差をつける絶好の武器になります。
であるならば、当然、ライバルには存在を隠し、本番の大会やライバルがいない営業現場で発揮し、成果を得たいものです。
しかし、環境変化によって、必勝の手順がすぐに陳腐化したり、営業トークが通用しなくなったりする可能性が高くなってきました。
また、一つの手法が有効である期間も確実に短くなってきます。
こんな状況では、アイディアを自分の中に留めて大事にしてもあまり意味が無く、すぐに周囲に伝播し、効果のフィードバックをもらい、更に高めていくべきである。
本書ではこのように書かれています。
また、普段自分が身を置く環境を、自分にとって心地良い場所ではなく、「少し背伸びした環境を選ぶ」ことが重要であるとも説明されています。
この環境選びもまた、様々な本で語られていることでもありますし、私自身の経験から言っても納得できる話です。
私は入社時点は都内の外れで営業をやり、周りの先輩や同僚にチヤホヤされながら、「自分は出来る担当者だ」と誤解したまま2ヶ店目に異動になりました。
そこでは、本当に営業が出来る人や分析力に優れた人など、優秀な担当者の集団で、私は完全に下から数えたほうが早いダメ営業マンになっていました。
大した努力もせず、毎日酒場でストレスを発散する生活を続けつつも、家族がいるから辞めるにやめられず、イヤイヤながら仕事を続けました。
3年程度経つと、「長く店にいる」からくる周囲の人脈と、一度奈落まで落ちた期待度と比較すればマシな仕事振りが徐々に評価され、次の異動では「中の上」ランクの職場に異動になりました。
ここでは、上位20%のメンバーには勝てないものの、上から30%程度の成績は残していたので、頑張れば上位集団に食い込める立場にいました。
この店が、一番大きく成長出来たと思っています。
逆に、次の異動場ではトップofトップ、ダントツ1位の成績をキープしており、ハッキリ言って堕落していました。
あのまま読書にハマる機会を得ていなかったら、今頃も堕落しきったまま、漫然と日々を過ごしていたのだろうと思っています。
このように、常に自分を「少し背伸びした環境」に身を置くことで、絶えざる挑戦と成長のキッカケを掴めるものだと本書でも述べられています。
もう一つ、「なんとなくできる」という危うさにも触れておきます。
こちらも本書に紹介されていることなのですが、器用な人程、少し習ったり練習しただけで、ある程度物事をこなせるものです。
しかし、この時点で安心して努力や分析を怠ると、素人と同じか少し出来る程度の習得レベルで中断してしまいます。
結果として、①他人に言語で伝えることができない、②環境が変わり技術が通用しなくなった時に、代替や進化が出来ない、③他人の技術を目にした時に、分析や応用で自分のものにできない、といった弊害が生まれます。
私自身の話だと、模擬試験の結果が点数として良かったとしても、「本番の火事場のクソ力」で解決できた問題は、次に似たような問題で登場した時に、またマグレに頼る結果になります。
本番で涙を飲まないためにも、「なんとなくできる」という習得レベルから、「他人に説明出来るレベル」までの昇華が肝要であるということです。
このためにも、自身を少し背伸びした環境に置き、誰かから教わったり誰かに教えたりする関係性が望ましいと改めて思いました。
〜 To Do 〜 |
少し背伸びした環境に自分を置く。 |
ゲーム大会の決勝、とんでもないプレッシャーが掛かってそうですね。
私自身はそこまでのプレッシャーを感じる経験は少ないですが、やはり、長期に準備してきた試験本番や大きな金額が動くプレゼンなどでは、プレッシャーを感じます。
また、最近で言えば、同僚の異動に伴う送別の夕礼で送辞を述べたときも、別の意味でプレッシャーが掛かりましたね、「ちゃんとウケるかなぁ・・・」と(笑)
それはさておき、緊張を強いられる場面でのメンタルについて、本書には以下のような心強い言葉がありました。
「勝負どころで効くのは、平凡な技」と。
これは、先程の「なんとなくできるは危険」の派生版なのですが、緊張を強いられる場面でこそ、基本の習熟度が活きているということです。
「息を吸って吐くようにできる技だけが、本番のプレッシャーがかかった場面で僕を救う。確実な技を確実に決める。劇的なプレイはそこから始まるのだ。」
のように書かれています。
私の体験談で言うと、2年前の診断士試験が挙げられます。
1次試験を1発で突破したことから、2次試験の準備期間が相当に短かったこともあり、初挑戦となる事例Ⅰ~Ⅲの対策に拘りました。
事例Ⅳは、自分が銀行員であったこともあり、財務分析やCF計算は得意で、対策の優先順位を下げたのです。
しかし結果は、事例Ⅰ~ⅢはAかB判定で、事例ⅣがD判定。
つまり、Ⅳの低得点が足切りになり不合格だったわけです。
特に、CF計算の中で減価償却費を足し戻さず、費用としてそのまま利益を算出してしまったのです。
もちろん、言い訳として、「非資金費用」という耳慣れない項目で書かれていたので見逃した、ということが本音です。
しかし、診断士試験で「営業CFを算出する際は、減価償却費は税引後利益に足し戻す」なんて、一丁目一番地の基本知識です。
これを、ただ「減価償却費」とだけ覚えていた人(=私)と、「減価償却費は現金支出が無いコストだから、営業CFを算出する際には、税引後利益に足し戻す」と理屈まで理解していた人(=合格者)とで、対応が異なったわけです。
自分自信が銀行員だと自惚れ、過去問対策でもソコソコ点数が取れていたので、「基本」の部分をおろそかにし、なんとなくの知識で受験をした結果でありました。
あの試験で、非資金支出の1を足し戻さなかった受験生は、問答無用で足切りになったのかもしれません。
どんな場面でも、土壇場で自分を救うのは「完全に自分の身についた技術・知識である」ということを改めて感じ、過去の失敗にも向き合えたような気がします。
基本を軽んじて、派手な「応用」にうつつを抜かさず、地味な往復答練を繰り返していきたいと思います。
〜 To Do 〜 |
基本に忠実に、息を吸って吐くように自然に出来るまで修練する。 |
まずは前半戦のまとめです。
プロ格闘ゲームと銀行の仕事と診断士試験。
あまりに畑違いなはずなのに、「努力の方向」という切り口だけで、多くの共通点が見いだせました。
自分の思いの丈が走って、読んでいただいている方には非常に読みにくい文章になってしまっているかもしれません。
大変申し訳ないですが、修正する力量も無いので、このままの調子で後半も書き進めていきたいと思います。
〜 To Do 〜 |
1.負けに慣れ、失敗から謙虚に学ぶ。 |
2.少し背伸びした環境に自分を置く。 |
3.基本に忠実に、息を吸って吐くように自然に出来るまで修練する。 |