『なぜ、あなたの話は響かないのか』

2018年06月15日 第1刷発行

 

著者:蔭山 洋介

 

発行所:株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン

 

【著者紹介】

スピーチライター。パブリックスピーキング(講演・スピーチ・プレゼン)やブランド戦略を裏から支えるブレーンとして活躍。クライアントには一部上場企業、外資系企業、中小ベンチャー企業の経営者や管理職、政治家、NPO代表、公益法人理事長、講師などリーダー層が多い。

著書に、『パブリックスピーキング 人を動かくコミュニケーション術』(NTT出版)、『スピーチライター 言葉で世界を変える仕事』(KADOKAWA)がある。

(著者紹介より抜粋)

 

【オススメ度】  
 読みやすい度 ★★★★☆ 
お役立ち度 ★★★★☆
憧れの人を探そう度 ★★★★★

ついに、東京オリンピックの延期が確定しましたね。

 

まぁ、世界でのウイルス拡大状況を見れば、当然の結論だと思いますが。

 

また、今週末は首都圏での外出自粛が要請され、桜が咲いているのに雪が積もるなど、なんだか落ち着かない日々が続きますね。

 

時差出勤や在宅勤務の方も多いのではないでしょうか?

 

私の会社でも、来週から当番制で在宅勤務のローテーションが始まります。

 

子供たちも学校が無く家にいるので、果たしてどうなることやら・・・という感じです。

 

 

 

では、今週の1冊です。

 

 3月8日にご紹介した「なぜ、あなたの話はつまらないのか?」と同時に購入した本です。

 

この本はAmazonで購入したのですが、「この商品を買った人が同時に買っている本」に出てきて、ついポチってしましました。

 

多分、タイトルが似ているから、という理由で同時購入に出てきたのだと思うのですが、内容は全然違って、今までにない切り口での話し方の本でした。

 

むしろ、「生き方」に対するアドバイスで、参考になりました。

 

私なりに概要をまとめましたので、ご紹介できればと思います。

  


〜現代のコミュ力とは〜

本書では、コミュ力を一言で言うなら、

 

知らない人とすぐに仲良くなって、場の空気を読んで周りと協調したうえで、成果を上げられるように発言し場をリードする力

 

と記載しています。つまり、

 

1.つながる力

 

2.空気を読む力

 

3.意見する力

 

に整理されると書かれています。

 

「つながる」だけが得意な人は、愛想よく人間関係を構築できますが、長く続けること、高いパフォーマンスを発揮することは苦手です。

 

「空気を読む」だけが得意な人は、人当たりは良いけれど、周りを巻き込んで仕事を進めることは苦手で、結果的に成果を出すことができません。

 

「意見する」ことだけが得意な人は、はじめのうちは仕事をリードできても、周りの人といさかいを起こしがちで、結果的にパフォーマンスが低くなってしまいます。

 

「つながる」こと、「空気を読む」こと、「意見する」こと。

 

これらを同時に達成することが、現代社会では求められています。

 

 

 

 

 


〜そもそもコミュニケーションとは?〜

コミュニケーションの定義は、人により千差万別、難しい問いだと思います。

 

本書では、キャッチボールに例えてこの定義を考察しています。

 

キャッチボールとは、ボールを渡すことが目的ではありませんね。

 

一つのボールをお互いに投げ合い、受け取りあい、また投げる。

 

ボールがどこに投げられるかは相手次第で、受け取る側にはコントロールできません。

 

そして、「キャッチボールをする」ことそのものが、楽しみであり目的となっています。

 

本書では、コミュニケーションをキャッチボ-ルと同様としています。すなわち、

 

①投げ手と受け手が何かをやり取りする不確実なもの

 

②それ自体に面白みがあり、楽しめるもの

 

ここから、コミュニケーション力の基本

 

①不確実なやり取りを成立させる力

 

②コミュニケーション自体を面白くする力

 

とも捉えることができます。

 


〜コミュ力が必要になった理由〜

このような難易度の高いコミュ力が必要になった理由は、社会の「流動性」が高まったことにある、と本書は述べています。

 

そもそも、歴史的に見て、少なくとも我が国ではコミュニケーションは、かつては社会一般の基礎教養ではありませんでした。

 

読み書きソロバンは教えても、コミュニケーションは寺子屋では教えなかったのです。

 

しかし戦後、農村社会から都市社会へと移行していく中で、コミュニケーションの問題にぶつかったと言います。

 

農村では、論理的に分かりやすく話す技術より、どれだけ長くコミュニケーションに時間を割いたか、が重要視されていました。

 

つまり、「話し合い」より「付き合い」が大事だったのです。

 

一方、都市社会では出世競争が行われ、初めて会う人に対して商品を売る技術が求められました。

 

ここで、論理的に分かりやすく話す技術や、短時間で打ち解けるコミュニケーション術が大きなリターンに直結するようになったのです。

 

ただし、高度経済成長期を代表とするこの頃は、終身雇用の色も強く、「空気を読む力」だけで成功できたと本書では述べられています。

 

社会全体が右肩上がりで市場が拡大する中、固定化したメンバーと前年踏襲型で輪を乱さず協力していけば、全員がハッピーになったわけです。

 

しかし、バブルが崩壊し本格的にITがビジネスに進出してくると、まず業界の流動性が高くなります。

 

つまり、稼げない業種は市場から淘汰され始めました。

 

技術革新の早期化、グローバルでの競合により、前年踏襲ではなく「常にイノベートする組織」が求められるようになってきました。

 

加えて、終身雇用制度の弱まりと共に、人材の流動性が高まり、初めて顔を合わせる人とのビジネスも頻繁に起きるようになってきました。

 

このような「ビジネス」と「人材」の流動性の高まりを主因に、先の3要素である「1.つながる力」「2.空気を読む力」「3.意見する力」の全てが求められる社会となったわけです。

 

もちろん、この流れは加速こそすれ、逆行することはないでしょう。

 

それでは、我々は何を求めどのように対策すれば良いのでしょうか?

 


〜価値の多様化に打ち勝つ〜

歴史的な背景を基に必要とされるコミュニケーション力の変遷を辿りましたが、もう一つ、社会の変化で大きく変わったことがあります。

 

それは、個人の価値観の多様化です。

 

バブル期には、「一流大学を出て、大企業に入って、マイホームを買って、幸せな老後を過ごす」といった、成功のロールモデルがありました。

 

ロールモデルは、私たちがどのように生きて行けば良いかのコンパスです。

 

では、現代の指針はどうなっているかというと、「あなたのやりたいことをやりなさい」です。

 

これは、従来以上に困難な課題です。

 

なぜなら、目指すべきゴール自体を自ら設定しなければいけないからです。

 

ここに、多様な価値観を承認する風潮が加わるとどうなるでしょう?

 

極端な例ですが、「自分は、インドの打楽器に目覚めたので、インドで修行して打楽器職人になり、それを日本に持ち帰って演奏するんだ!」という夢を持った人がいるとします。

 

高度経済成長期に自分の子供がこんなことを言ったら、「バカなこと言わないで、真面目に勉強して良い大学に入れ!」と一喝されたでしょう。

 

しかし、現代は多様な価値観を容認する時代ですし、先程の例でも社会的な成功を収める人も実際に出てくるでしょう。

 

このような多様な価値観を認め合う風潮は素晴らしいですが、自分の信じる価値を他の人に分かってもらうのは、実は大変なことです。

 

先程の例で、「インドの打楽器」の良さを周囲の知人に猛アピールしても、一緒にインドに渡ってくれる友人を見つけることは難しいかもしれません。

 

ここで、多様な価値観を「安易」に認めあうと、コミュニケーションは成り立ちません。

 

「うーーん、私には良さが分からないね。まあ、あなたはあなたの価値観で、私は理解できないけど、頑張って☆」では、コミュニケーションが成り立ちません。

 

では、どうすればよいのか?

 

ここで、タイトルである「なぜ、あなたの話は響かないのか?」の答えが出ています。

 

それは、想いや情報を「伝える」コミュニケーション力だけではもはや相手の心に響くことはなく、そこから一歩進んで、自分の「価値」を築き、自信をもって価値のやり取りを楽しむことが必要だ

 

と本書では結論付けられています。

 

 

 


〜価値を生むのは「今ここ」から「どこか」へ連れ出すこと〜

私たちは、常に「今ここ」よりも、もっと楽しい「ここではないどこか」という非日常を探し続ける習性を持っています。

 

そのため、旅行に行きますし、映画や小説などの物語を求めます。

 

本書のコミュ力では、そのような人間の心理を逆手にとり、自分の向こう側に非日常があるような予感を、相手に与えることを目的としています。

 

それは、相手に「あなたといるとすごく楽しいことが待っている気がする」「今よりもっと楽しい体験ができる気がする」と思われることです。

 

とは言え、大多数の人の趣味に迎合するとか、驚かれる特技を身に着ける、という意味ではありません。

 

自分の価値、相手を非日常に連れ出す力をひとことで言うならば、「未来に向かって成長し続けること」です。

 

企業であれば、大きなビジョンを描き、実行する力。

 

個人であれば、夢を持ち、公言して努力し続ける力。

 

表面的なコミュニケーション術を身に着けるのでは無く、自分自身が未来に向かって成長し続けることを価値に置き、相手と価値の交換をしていく姿勢を、本書は推奨しています。

 

・・・とは言え、急に夢を持ったり、未来に向かって努力をすることはすごく大変ですよね。

 

そこで、本書がオススメしている対策が、「憧れの人を持つ」です。

 

自分が憧れる人を見つけ、その人の生き方や態度を真似をする。

 

そうやって、現代では多様に分散してしまった「ロールモデル」を自分で作り、そのゴールに向かって努力をすること。

 

これが、「信頼と価値の時代のコミュ力2.0である」と定義付けられています。

 

  

 

 

 


〜まとめ〜

なぜ、自分の話は響かないのか?

 

↓(それは)

 

自分が目指すべき姿が無く、自分の価値に自信が持てていないから。

 

↓(だから)

 

憧れの人物を見つけ、ロールモデルとして成長をコミットし、自分の価値向上を目指すべき。

 

↓(そうすれば)

 

自信がついて、相手に「一緒にいてわくわくする」と思わせ、コミュニケーションがうまくいく。

 

 

・・・単純化すると、ちょっと論理が飛躍しているような気もします。

 

しかし、本書の著者は多くのクライアントを持ち、コミュ力を向上させている実績があります。

 

また、思わず話を聞き入ってしまう人は、画一的な話し方をしているわけではなく、むしろ表面的な話し方自体は個性的だったりたどたどしかったり、千差万別です。

 

であるなら、短絡的なテクニックを身に着ける前に、まずはどんな人とでもすぐに打ち解け、相手の意見や価値を聞き入れる度量を持ち、自分の意見を自信たっぷりに伝える力

 

すなわち、「つながる力」「空気を読む力」「意見を言う力」を恐れず発揮できるよう、まずは自分のバックボーンを強力にすること。

 

これこそが近道であり、また、本質ではないでしょうか?

 

この本には非常に共感できました。

 

・・・そして、私自身が憧れる人を未だに見つけられずにいて、焦っています(苦笑)

 

まずは、向上心が強いメンバーが集まる集団に所属できるよう、そのパスポートを勝ち取りたいと思います。