2008年2月15日 第1刷発行
著者:酒井 穣
発行者:山口 鷹
発行所:株式会社ディスカバー・トゥウェンティーワン
【著者紹介】
1972年、東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、オランダTiburg大学TiasNimbas Business School経営学修士号(MBA)首席取得。商社にて新事業開発、台湾向け精密機械の輸出営業などに従事。後、ヘッドハンター経由でオランダの精密機械メーカーに転職し、オランダに移住する。主に知的財産権本部に所属し、技術マーケティングや特許ポートフォリオの管理を担当する。オランダの柔軟な労働環境を活用して、現在も知的財産権本部での仕事に精力的に取り組みつつも、2006年末に各種ウェブ・アプリケーションを開発するベンチャー企業であるJ3 TrustB.Vを創業し、最高財務責任者(CFO)として活動を開始する。オランダでの生活、経営や育児、語学やグルメなど幅広い話題をカバーするブログNED-WLTの管理人。
(著者紹介より抜粋)
【オススメ度】 | |
読みやすい度 | ★★★☆☆ |
お役立ち度 | ★★★★★ |
バイブルとして手元に置く度 | ★★★★★ |
小正月も終わり、本格的に新年が始まりましたね。
私のプライベートでは、親戚に不幸がありお葬式に出たり、
娘がインフルエンザになり付きっきりで看病したりと、
中々落ち着かない日々が続いております。
昨日は最後のセンター試験がありましたね。
東京でも雪が舞う厳しい寒さです。
みなさま、ご自愛下さい。
では、今週の一冊です。
タイトルに惹かれて手に取り、値段を見て即決しました(苦笑)
このタイトルですが、パッと見た印象では
「初めて課長になる人」のための教科書 かと思っていました。
しかし、中身を読んだら違いました。
むしろ
日本で最初の「課長のための教科書」 と主張していると感じました。
過去の本と比べたわけではありませんが、まさしく、「課長職」に必要な知識・概念・技術を体系的にまとめた良書であると思います。
この本は、何度も読んで知識を定着させる他、躓きがある度に手引を求めて反芻するバイブルとしたいと思います。
新人課長のみならず、現在管理職に就いている方、これから管理職を目指す方は、是非ご一読頂きたいと思います。
本書は、非常に多岐に渡った知識や技術を体系的且つ普遍的に説明しています。
そこで、いつものように「特に私が感動した3つ」などと言わず、紹介されているテーマを全て列挙させて頂きます。
管理職の悩みや課題は人によって様々だと思いますが、下記に列挙するテーマに該当するものがあれば、本書の購入は無駄にならないと思います。
是非、ご検討下さい。
本書では、まず「課長とは何か」を定義しています。
結論だけ抜粋します。
1.「予算管理(数値ノルマの達成)に実質的な責任をもつ管理職」の中で最も下位職
2.経営者と直接仕事の話をすることができる最下位のポジション
3.部下の業績や能力を評価すること(査定)が正式に認められている最下位のポジション
また、以下の特徴を持つとされています。
・年齢や能力に大きな幅がある部下を持たなければならない。
部下・顧客・上司、三方向に意識を向け、利害を調整するのが仕事。
・課長にはリーダーとマネージャー両方の資質が必要だが、
経営者がリーダー寄りであるのに対し、課長はマネージャー寄りである。
・課長は「顧客第一主義」という共通の価値観を軸に、
世代間の通訳をする役割がある。
・課長は経営者が発信する経営情報と末端社員が持つ現場情報、
2つの情報をバランスよく持つ、企業の情報伝達のキーパーソンである。
・課長は、部下に徹底的にルーティン・ワークを教え込むことで、
例外的な問題や事業機会を発見する仕組みを作り上げなくてはならない。
・課長は「重要な現場情報」を経営に引き上げ、
経営ビジョンを現場に浸透させるナレッジ・エンジニアである。
本書では、8つの基本スキルが紹介されています。
タイトルとポイントを列挙します。
スキル1
【部下を守り安心させる】
部下が失敗しても、そのまま部長や経営者に報告してはならない。
部下を守り安心させれば、部下はためらいなく悪い情報を課長に報告できる。
スキル2
【部下を誉め、方向性を明確に伝える】
課長は、部下の成長を評価し、感謝の意を伝えることで、
部下への期待値の高さと、部下の進むべき方法を伝えなくてはならない。
スキル3
【部下を叱り変化をうながす】
部下を叱る目的は、部下が自分自身で仕事のやり方を変えるように促すことである。
そのためには、信頼と期待を伝え、部下自身に原因と対策を発見させるようにする。
スキル4
【現場を観察し次を予測する】
課長は現場を動き回り、直感的に情報を集めることで、次を予測することができる。
スキル5
【ストレスを適度な状態に管理する】
高いパフォーマンスを発揮できるストレス・レベルになるように仕事を割り振る。
本来の力が発揮できないほどストレスが多すぎる状態に追い込んではならない。
スキル6
【部下をコーチングし答えを引き出す】
普段の会話で、聞き上手・質問上手になることで
コーチングスキルを高めることができる。
スキル7
【楽しく没頭できるように仕事をアレンジする】
部下が仕事に没頭できるよう5つの条件に配置する。
①目的と価値が明確
②コントロールできる
③適切な難易度
④邪魔が入らない
⑤成功の基準が明確
スキル8
【オフサイト・ミーティングでチームの結束を高める】
肩書や立場を取り払ってホンネで話せるオフサイト・ミーティングによって
メンバーの意外な素顔を知り、チームの結束を高めることができる。
それぞれのスキルの詳細な内容は、是非本書をご参照下さい。
企業という組織で活動する以上、避けて通れない苦難があります。
正義感を正面から振りかざして組織と戦ってもよいのですが、非合理な「ゲーム」と割り切って最小の労力で乗り切ってしまうのも立派な手段です。
本書では予算管理・人事評価・社内政治について、効果的に対応するポイントが紹介されています。
ポイントを列挙します。
ゲーム1
【企業の成長を阻害する予算管理】
・予算は悲観的な視点で組み立てるようにする。
・経費は多めに、売上や入金は少なめに見積もる。
・予算の数値目標には説得力のあるストーリーを用意する。
・前年度より悲観的な数値は、説明できるだけの客観的なデータを用意する。
・一度決まった予算の目標数値は、何があっても達成する。
ゲーム2
【部下のモチベーションを下げかねない人事評価】
・人事評価は、出来る限りすべての部下に高い評価を与え、モチベーションを高める機会とする。
・人事の根本は、従業員の才能を最大限に引き出すことである。
・低い評価の部下には、人事評価の以前にサインを送り、心の準備をさせておく。
・評価とともに、今後への期待を伝え、スキルアップの機会を提供し勇気づける。
ゲーム3
【限られたポストと予算をめぐる社内政治】
・社内政治への理解を深め、仕事を有利に、かつ効率的に進めるために利用する。
・非公式に影響力のあるキーマンを知っておくことが、政治力を発揮する第一歩である。
・キーマンに対しては、ギブ&ギブの姿勢で、自らが有用な人材になるようにする。
・政治的に敵対する相手に勝つためには、相手を褒めることが有効である。
・社内横断的なプロジェクトに献身的にかかわることがキーマンになるための王道である。
課長には、突如降りかかってくる問題が多数あります。
ただ、事前に学び備えておくことで、実際に問題に直面した際に慌てず対応出来るようにすることが肝要です。
本書では9つの問題とその対応策が説明されています。
ポイントだけ記載しておりますので、詳細は本書をご参照下さい。
問題1
【問題社員が現れる】
・Cクラス社員には「こなせる仕事」を与え、モチベーションと能力を高めるようにする。
・「自分が出来ることは他人にも出来るはず」という発想であたってはならない。
問題2
【部下が「会社を辞める」と言い出す】
・「気が付いたら既に転職先が決まっていた」と驚くことがないように、日頃から部下を
観察するとともに、社内ネットワークを築いておく。
・部下の「辞めたい」という言葉は、「話を聞いて欲しい」というサインであることも多い。
問題3
【心の病にかかる部下が現れる】
・心の病のきざしにきづけるように、メンタルヘルスの基礎を学ぶとともに、
敏感な職場の女性から、様子のおかしい社員を教えてもらえるようにしておく。
問題4
【外国人の上司や部下を持つ日が来る】
・外国人との問題は「文化の違い」が原因か「態度の問題」がの見極めが肝心である。
・「文化の違い」が原因の場合は、上司に報告し慎重に対応しなければならない。
問題5
【ヘッドハンターから声が掛かる】
・ヘッドハンターから声が掛かっても、転職を急がずに長期的な視点で付き合う方が賢明である。
問題6
【海外駐在を求められる】
・海外駐在では帰国後のポストの保証が無いことを前提に、準備をしておくと良い。
問題7
【違法スレスレの行為を求められる】
・仕事の合法性の判断の頼りになるのは、自らの常識と良識である。
・ただし海外では、常識が通用しないケースは少なくない。
問題8
【昇進させる部下を選ぶ】
・昇進させるのはイエスマンでは無く、全体の利益を考え、無私に優れた
仕事が出来る人物でなくてはならない。
問題9
【ベテラン係長が言うことを聞かなくなる】
・業績を競わせたり、重要で困難な仕事を与えることで、ベテラン係長の反乱は未然に防ぐ。
・自らの政治力をほのめかし、常日頃から自分自身を権威付けしておくことも必要である。