1990年9月17日 第1刷発行
著者:松本 一男
発行者:江口 克彦
発行所:PHP研究所
【著者紹介】
1925年、台湾生まれ。東京大学外学院修了。文学修士。東京都立大学、茨城大学、明治大学等の講師、協和信用組合理事長、東京都信用組合協会理事中央部会長等を歴任。現在、中国文学者および金融評論家として活躍中。
主な著書に、『管子』『三国志 座右の銘』『中国人と日本人』『中国兵法の読み方』『中国式人相学入門』『司馬仲達・覇者の人間学』『三国志の統率学』『乱世の詩人たち』など、多数がある。
(著者紹介より抜粋)
【オススメ度】 | |
読みやすい度 | ★☆☆☆☆ |
お役立ち度 |
★☆☆☆☆ |
孫氏に興味が湧く度 |
★★☆☆☆ |
暑い日が続いていますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか?
夏季休暇を取得される方も多くなってきていると思います。
今年のお盆は、旅行も帰省もどうしたら良いのか、悩ましいところですね。
日々の行動を「自己判断」で、、、といった感じでしょうか。
自身の良心に沿った行動を取っていきたいものですね。
それでは、今週の1冊です。
経営の成功体験を記した書を読んでいますと、度々現れてきます、「孫氏」です。
今まで関心を払ってこなかった分野ですので、入門書に近いものを探して購入しました。
積み上げた知識が無いからか、あまり楽しくは読めませんでしたが、今まで知らなかったこともしれて、見聞は広がりました。
今回は「勉強になった」とまでは言えないのですが、今まで知らなかったことも含めて、3点ご紹介致します。
孫氏には、勝利を収めるための条件が5つ記述されています。
勝ちを知るに五あり。
以て戦うべきと以て戦うべからざるとを知るものは勝つ。
衆寡の用を知るものは勝つ。
上下欲を同じくするものは勝つ。
虞を以て不虞を持つものは勝つ。
将、能にして、君、御せざるものは勝つ。
勝利をおさめるための条件は5つある。
1.戦うべきか否かを判断できること。
2.兵力に応じた作戦を取れること。
3.君主と人民が心を一つに合わせていること。
4.万全の体制で敵の不備に漬け込むこと。
5.将軍が有能であって、しかも君主が将軍の指揮や作戦に干渉しないこと。
そして、この後に、あまりにも有名なこの言葉が続きます。
彼を知り己を知れば、百戦して危うからず。
彼を知らずして己を知れば、一勝一敗す。
彼を知らず己を知らざれば、戦うごとに必ず危うし。
敵を知り己を知るならば、絶対に負ける心配はない。
己を知って敵を知らなければ、勝敗の確率は五分と五分である。
敵を知らず己も知らなければ、いつ戦っても負ける。
現在の自分の境遇に置くと、己を知ること、敵を知ることは当然重要でありますが、条件5はハッとさせられました。
将、能にして 君、御せざるものは勝つ。
将軍が有能であって、しかも君主が将軍の指揮や作戦に干渉しないこと。
確かに、組織のトップの干渉度があまりに過ぎると、部下は思い切った戦略が立てられなかったり、行動が制限されたりします。
また、精神的に束縛されると、発想が貧困になり、単純な行動や言い訳が横行してしまいます。
自分自身、下員への干渉が強いキライがあるので、心に留めておきたい言葉です。
〜 To Do 〜 |
将、能にして 君、御せざるものは勝つ。 |
孫氏には、いくさ上手のポイントが下記のように記されています。
善く戦うものは、これを勢いに求めて、人に求めず。故によく人を選びて勢いに任せず。
勢いに任せる者は、その人を戦わしむるや木石を転ずるが如し。
木石の性は、安ければすなわち静かに、危うければすなわち動き、方なればすなわち止まり、円なればすなわち行く。
故に善く人を戦わしむるの勢い、円石を千尋の山より転ずるが如きは、勢いなり。
いくさ上手は、なによりもまず勢いに乗ることを重んじ、兵士ひとりひとりの働きには過度の期待をかけない。
つまり個々の動きよりも全体の勢いを重視するのである。
勢いに乗れば、その舞台は坂道を転がる丸太や石のように、とてつもない力を発揮するものである。
丸太や石は、平坦な場所では静止しているが、傾斜した場所ではよく動く。
四角いものは動かないが、丸いものは転がる。
勢いに乗って戦うとは、丸い石を千尋の谷に転がすようなもので、これが戦いの勢いというものである。
これも、現在の職場に当てはめてみると分かる気がします。
サラリーマンであれば、当然、各個人にノルマや目標があると思います。
そして、その達成のためには、何よりも個々人が自身の裁量や努力でノルマ達成を目指すべきです。
一方、組織のトップとして組織全体のノルマを達成させるために、構成員個々人をギリギリ詰めれば良いかというと、これは短期的な効果しかもたらしません。
中長期的には、やはり個々人が萎縮したり自身で思考・努力することを放棄したりします。
反対に、孫氏の言うように、組織全体の勢いを重視すると、各構成員は「自分も負けていられない」「このまま頑張らないと、逆に悪目立ちしてしまう」といった理由から、自ずと頑張るものだと思います。
元に、自分が所属した今までの支店や部署も、全体として勢いがあるか否かが、自分自身のモチベーションの多寡に関わっていたと感じます。
より大きな組織を従えるとき程、個々よりもまず全体の勢いを重視すべきだと感じました。
〜 To Do 〜 |
善く戦うものは、これを勢いに求めて、人に求めず。 |
孫氏には、開戦直後の戦い方について、以下の記述があります。
この故に政挙の日、関をそこない符を折りて、その使いを通ずることなく、廊廟の上に励まし、以てその事を誅む(せむ)。
敵人邂逅すれば必ずすみやかにこれに入る。
その愛するところを先にして密かにこれと期し、践墨(せんぼく)して敵に従い、以て戦事を決す。
この故に初めは処女の如く、敵人戸を開く。後には脱兎のごとく、敵防ぐも及ばず。
だからいよいよ開戦のときには、関所を封鎖して通行証を破棄し、いっさいの往来を禁ずる。
廊堂では軍議をこらして作戦計画を決定する。
敵情を分析し、敵の動きを見極める。
敵の最大の急所に先制攻撃を書ける。
あくまでも隠密裏に動き、敵の出方に応じて随時作戦を変えながら進行する。
これが戦端の開き方である。
要するに、初めのうちは生娘のようにやさしくふるまって敵の油断を誘う。
そして、ころよしとみれば、脱兎の如き勢いではげしくつぶかっていく。
そうすれば、敵はいかにがんばってみても、とても防ぎきれるものではないのである。
これは、「いざ開戦」となったとしても、準備も無しにいきなり攻めることは慎むべし、という意味だと解釈しました。
当然、緊張状態が続き、「よろしい、ならば戦争だ」となれば、最終的には直接の争いは避けられないでしょう。
ただし、事前準備が不足していた場合は、だからといって闇雲に攻めることは得策ではありません。
まずはこちらも攻める準備を行うために、情報を遮断し、速やかに戦略計画を立てる。
その計画は、「敵の最大の急所に先制攻撃を掛ける」ものですので、じっくりゆっくり議論している余地はありません。
最も効果的と思われる一手を、最低限の時間で決定して実行する必要があります。
つまり、慌てて愚策を行うのではなく、かといって無駄に時間をかけず、「一歩とまって、頭を使って、効果的な一手を速やかに打つ」ということが大事なのだと解釈しました。
自分自身の仕事に置き換えても、うまく行かない交渉や会議は、準備不足で慌てて参加したり、やる気がなくて準備を怠ったりしたものが多いです。
逆に、準備にあまりに時間を掛けすぎると、相手の期待度が膨らんでしまい、やはり効果的ではありません。
一歩たちどまって少し頭を動かしたら、最速で一手を打つ、ということを肝に命じたいと思います。
〜 To Do 〜 |
初めは処女の如く、後には脱兎の如く。 |
初めて孫氏の入門書を読んで、これは確かに「経営者」にとっての指南の書であるなとつくづく感じました。
現在は中間管理職としてのサラリーマンですが、さらに年月を経ると、よりレイヤーを上げた経営者目線の考え方も必要になるかと思い、このような本も即効性は無いものの少しずつモノにできるように、今から準備していきたいと感じました。
〜 To Do 〜 |
1.将、能にして 君、御せざるものは勝つ。 |
2.善く戦うものは、これを勢いに求めて、人に求めず。 |
3.初めは処女の如く、後には脱兎の如く。 |